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1980年初期 HTLV-1に対する検査法の進歩により、全国レベルのキャリア分布、ATLの疾患概念の確立、86年のHAM発見など、HTLV-1にかかわる医師、研究者の努力によって実態が把握されてきました。特に血液を介しての感染成立は、日赤献血事業には大きな影響があり、1986年には献血検体の全数スクリーニングが全国レベルで実施しされ、輸血による感染は防ぐことが出来るようになりました。1991年、当時の厚生省研究班がまとめた報告書では「地域差が大きいので、国が全国一律に関与するより、自治体の裁量に委ねるのが望ましい」とされました。主な感染ルートとは母乳による母子感染ですが、妊婦への抗体検査を一部無料化して積極的対策を採っているのは、鹿児島、宮崎、長崎、高知、静岡、岩手の6県しかないのが現状です。しかし国は
① 献血ルートの全数検査
② キャリアのうち5%しか発症せず、ほとんどは発症しないので心配にはあたらない
③ 多発地域の最大感染は母子感染であり、すでに対策済み
④ 多発地域の母乳制限をすれば、将来はなくなる病気だから国があえて対策する必要性なし
としてフォローの実態調査もせず、20年近くこの疾患をいわば放置します。1988から1991年の3年間で研究班が報告したATL患者の年間死亡数は750名。現在の年間死亡数は1000から1200名といわれております。実態は国の誤策によって死亡数は増えています。
丸投げされた鹿児島県は1997年より、鹿児島ATL制圧10ヶ年計画を策定して母子感染を中心に対策を取ります。目標は以下の3つが掲げられました。
①母子感染率を5%以下にする。
②献血者のキャリア率を1%以下にする。
③ATL死亡数を限りなく0に近づけるために医療機関と連携し母子感染防止、治療法の確立に努める。
平成18年の報告書では、①、②は達成し、まずまずの成績であったと理解できます。一方、対策を地域に任せたが故の弊害も明らかになっています。福岡県と関東1都3県の10代初回献血者のHTLV-1抗体陽性者数の比較をしてみると、以下の事実があります。
| 福岡 | 陽性率 | 関東 | 陽性率 | |
| 1995年 | 24人 | 0.6% | 10人 | 0.05% |
| 2000年 | 34人 | 0.5% | 17人 | 0.07% |
| 2005年 | 20人 | 0.3% | 24人 | 0.08% |
福岡県では、感染者は減少傾向にあるのに、関東地区では増加して福岡県の人数を越えています。
江戸時代なら、人の移動は厳しく制限され、鹿児島県で生まれた人は一生鹿児島県で暮らし人生をまっとうしたでしょう。だからその地方独自の対策が有効でした。しかし現代社会は、ヒトも物も全てが流動的で、それに見合っただけの大きな網をかけていなければ、安全な感染対策にならないのが実情です。患者の会や一部の研究者の努力によって、感染対策の重要性を訴えてきたことで、厚生労働省は失われた20年に気づき、2010年までの3年間で実態調査に乗り出したところです。