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成人T細胞白血病(ATL)の発症メカニズムのすべては解明されていません。しかし、すこしずつ証拠固めは進んでいます。HTLV-1は感染後、ウィルスRNAから逆転写酵素の働きでDNAに自分を変身させ、宿主のT細胞のDNAに組み込ませます。(プロウィルス化)その組み込み部位はランダムです。キャリアの感染細胞はポリクローナル(多様性)な増殖から、モノクローナル(単一性)な増殖へと移行し、ATLを発症します。中間状態の患者からATLの発症が見られており、ウィルス感染細胞の増加した状態はATLを発症とも密接に関連しています。HTLV-1感染細胞を増やす機序とそれを排除しようとする免疫学的機序のせめぎ合いの中で、感染細胞はポリクロナールに増殖し、さらにその一部がモノクロナールになり、さらに遺伝子異常が蓄積して、悪性転換が起こって(=がん化して死ななくなる)ATLが発症すると考えられています。現在、感染細胞の中でHTLV-1の遺伝子から出来るたんぱく質のうち、taxと呼ばれるたんぱく質ががん化の中心的な役割を果たしていると考えられています。具体的な働きとして、
①細胞が持つ遺伝子から勝手にたんぱく質を作り出す。
②シグナル伝達が勝手に働き続ける。
③DNAの傷の修復を妨げる。
④細胞分裂を無限に繰り返すよう働きかける。
⑤染色体の異常がおきる。
ATLの年齢発症分布をみて、HTLV-1感染細胞からATL細胞になるまで、5つないし6つの重要な細胞遺伝子異常があると唱えている人がいます。
最初の3つの遺伝子異常により、HTLV-1感染リンパ球はポリクロナールから一部はオリゴクロナールないしはモノクロナールになるのもののまだ悪性化していない。(悪性化していないがその一部は染色体異常を伴うくすぶり型になっている)オリゴクロナールないしはモノクロナールな状態の中から、さらに1から3個の遺伝子異常が加わり、臨床的なATLとして発症する。さらに1つの異常が加わり遺伝子異常の数が4つになると予後の悪いくすぶり型または慢性型として発症する。しかしくすぶり型の3割と慢性型の8割でさらに1から2個の付加的な遺伝子異常が起こり、典型的なATL(急性型)の病態へ進展する。一方くすぶり型の7割と慢性型の2割はそのままの状態にとどまり、慢性に経過すると考えています。
注1) ポリクロナール:上記の文章中の意味は、遺伝上の多様性を表しています。たとえば、両親が同じでも卵子・精子が別々の兄弟(二卵性)は、遺伝子上の差があるのでポリクロナールとなります。
注2) モノクロナール:上記の文章中の意味は、遺伝子上の単一性を表しています。たとえば、一卵性双生児は一種類の遺伝子より生まれ、兄弟となったものです。つまり遺伝子上の差がないので、モノクロナールとなります。